企業組織のグローバル化に必要な方針

最近、特にグローバル化が叫ばれているようであるが、実は過去から現在に至るまで、日本企業のグローバル化の波は幾度となくあった。そして現在が、第四の波であると言われている。

グローバル化第一の波は、1980年代に製造業中心に海外(欧米中心)に市場を求めた時であった。これはバブル期にも重なり、ジャパニーズビジネスマンが、海外に出かけて行き商品を販売することに力を入れていた時代である。また80年代後半は、円高が進み、日本企業が得た有益で海外の物件を買いあさったためバッシングを受けていた時代でもあった。

第二の波は1990年代に、円高を背景に、輸出コスト削減を求めて海外に生産拠点を築いた時代である。親企業が海外進出するにともない、中小企業も一緒に海外に生産拠点を移すという事例が多く見られた。

第三の波は2000年代に販売・生産機能の現地化進めた時代である。90年代に生産拠点を築いた日本企業は、生産した商品を、その地域で販売することにも力を入れ始めた。特に家電系、自動車系の企業が、マーケティング活動を行い海外販売において売り上げを伸ばした時期であった。

現在、第四のグローバル化の波が今までにない高まりを見せている。その理由は、それまでは内需で成長できた企業が、少子化やマーケットの縮小により、海外に販売先を求めなければならなくなった事にある。
第四の波は過去に行われた海外進出と意味合いが変化している。つまり、今のグローバル化の重要性は、さらなる売上を求めて海外に出ていくのではない。海外に出て行かざるを得ない状況が根底にあり、生き残りをかけてグローバル化に取り組むことが必要不可欠だからである。よって企業は今まで以上に、好むと好まざるに関わりなく、グローバル化に真剣に取り組まなければならない立場に置かれるようになっている。

こうした第四のグローバル化の流れにあり、今まで以上にクローズアップされているのが人材であり、そのために各日本企業はグローバル人材の獲得に熱を入れている。そのことは以下のアンケート調査によっても明らかである。

数年(ここ3年程度)以内に実現したい経営上の重要課題 (経営戦略上の重要テーマ)

3 『労政時報』:企業の人事戦略に関するアンケート 2011

この調査では「人材力強化(採用・人材育成・人が育つ仕組みづくりなど)」が重要課題とする回答が76.6%と8割近くに達している。特に1000人以上、300~1000人の企業においてこうした傾向が強く、少子高齢化などで国内市場が縮小するため企業は「新製品・新規事業の開発」や「収益性向上」「事業のグローバル化、海外進出」などに活路を求めており、それを支える「人材力強化」が多くの企業の課題となっているようである。

 

日本企業のグローバル化に向けた組織のありかた

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C・A・バートレット/S・ゴシャールは『地球市場時代の企業戦略 : トランスナショナル・マネジメントの構築』(Bartlett, C. A., and S. Ghoshal. Managing Across Borders: The Transnational Solution. Harvard Business School Press, 1989)の中で、多国籍企業組織のモデルは、グローバル型、マルティナショナル型、インターナショナル型の三つのタイプに分けられる、それらが最近の急速な状況の変化にともなって、4つ目のトランスナショナル型に収斂されていくという見解を示している。以下それぞれの型を比較してみたい。

 

①マルチナショナル型
まず第1のマルチナショナルだが、これは欧州諸国によく見られる組織の型となっている。本社がすべてを経営方針の決定するのではなく、現地の経営方式に沿う形をとって、各国市場の違いに対応しようとする方法である。これは本社が、強く現地をマネジメントするというよりは、ゆるくつながった権力分散型連合体のスタイルとなっている。

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 C・A・バートレット/S・ゴシャール『地球市場時代の企業戦略』吉原英樹監訳,日本経済新聞社,1990 年,P68,図3-1

 

②インターナショナル型
インターナショナル型は、アメリカ企業が海外に展開する際によく見られるスタイルである。現地の子会社でも技術移転により、新製品や販売戦略を自由に改良できるようになっているが、製品開発、経営方法、着想、イノベーションなどについては親会社に大きく依存し、本社の管理や統制の度合はマルティナショナル企業よりも強いスタイルである。積極的に権限の委譲をしながらも、本社による経営体制と専門的な経営幹部によって管理が行われ、本社幹部の意思が伝わるようになっている「調整型連合体」とでもいうべき組織である。

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C・A・バートレット/S・ゴシャール『地球市場時代の企業戦略』吉原英樹監訳,日本経済新聞社,1990 年,P69,図3-2

 

③グローバル型
グローバル型は情報や権限の中央集中化を基本にしている。厳しい中央管理体制の下で、グローバルな規模での効率化を追求して標準化された製品を世界中に出荷する方法である。これは元来フォードやロックフェラーが採用した方法であったが、後に日本企業の多くで見られるスタイルとなった。海外子会社の役割は販売とサービスに限られ、本社で開発した計画と方針を実行することである。
マルチナショナル型組織やインターナショナル型組織に比べ、グローバル型組織は製品や戦略を生み出す自由が少なく、既存のものすら改良することもできない。この組織機構は「中央集中」であり、中央集中型の結びつきの中で子会社が親会社に依存して厳しく管理されている。

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 C・A・バートレット/S・ゴシャール『地球市場時代の企業戦略』吉原英樹監訳,日本経済新聞社,1990 年,P70,図3-3

 

④トランスナショナル型
先に挙げた三つの組織は、それぞれに特徴と長所を持ち合わせている。

  • 効率性(グローバル型)
  • 適応性(マルティナショナル型)
  • 学習力(インターナショナル型)

今までは企業組織において、この三つの目的のうちのどれか一つを成し遂げるためには,他の二つを犠牲にするか,あるいは一定の妥協を図らなければならないというジレンマを抱えてきた。その理由は、本社を中心にして、子会社に対しての情報や権限をどのようにコントロールするか(自由に決定権をあたえるか、あるいは統制するか)という問題が中心であったからである。

しかし今は、グローバルなレベルでの競争の激化により、多国籍企業にはスピーディでフレキシブルな対応が重要になり、その如何こそがビジネス競争勝利の条件となってきている。つまり過去の様に、本社を中心に組織を考えるのではなく、状況に合わせて適切に各組織が意思決定をスピーディーに行わなければならない。現代のグローバルな競争で抜きん出るためには、費用も収益も同時に管理しなければならない。さらには効率とイノベーションはどちらも重要で、かつイノベーションは子会社も含めた様々な部分から起こるのが望ましい。こうした諸条件を満たす組織型として、包括的に三つの組織の長所を兼ね備え、かつそれぞれの特性に柔軟に対処しながら、ネットワークを結びつけて管理する、トランスナショナル型組織が求められるようになっているのである。

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C・A・バートレット/S・ゴシャール『地球市場時代の企業戦略』吉原英樹監訳,日本経済新聞社,1990 年,P120,図5-1

トランスナショナル型企業は、本社がどの国か、またトップや役員がどの国の人間であるかも問わない、地球規模でビジネスを展開する企業である。こうした企業では、単に人材のグローバル化を狙うだけではなく、経営手法の根本までグローバルな視点をもった方法が取られている。企業内の公用語は英語を採用し、従業員の採用においても国籍を問わない。多国籍に企業が展開する場合には、本社のある国の文化で、すべての従業員を縛れる訳ではないので、強い企業文化や理念をもって組織は束ねられなければならないし、それに伴い人事制度も世界で統一されている必要がある。

こうした企業は、グローバルな人材の獲得が重要であり、それに伴いグローバルな視点をもったマネージャークラスの人材を育成も重要視している。今、日本企業ではグローバル化に向けた新卒採用に力を入れているが、それを活かすことのできるマネージャークラスにグローバル人材が少ないという弱みを持っている。いくらグローバル人材と思われる若手を入れても、マネジメントしたり、彼らが活躍できる場を作らなければ企業全体としての成長は望めないだろう。

企業の上級クラスではグローバル化は急務であり、必要であるという認識をもっているが、中間層においては、そうした意識がまだ希薄であるように思われる。こうした中間層にグローバル人材を投入することも、グローバル新卒採用に力を入れることと並行して行わなければ効果は出ないし、そのための育成プログラムに企業は真剣に取り組まなければならないだろう。

今後、日本企業がグローバル化を進めるには、人材強化(採用、人材育成、人が育つ仕組)への取り組みが必要であり、その部分で出遅れることは、グローバル化に対しても遅れを取ることになる。グローバル化を促進するための「ソリューションとしての留学・研修」を提供することが、今後の我々には求められるようになると考えている。

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